特許の審査では拒絶理由通知を普通は受ける【最善をつくす中間処理①】

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知財事業研究所の弁理士の山本英彦です。

前回のブログ

スーパー早期審査は本当に早いのか?【最速でやってみる特許審査】でスーパー早期審査の結果として拒絶理由通知が来たことを書きました。「拒絶理由通知」というと、もう特許は取れないのではないかという厳しい印象を抱かれる方が多くいます。でも大丈夫です。タイトルにもあるように拒絶理由通知を普通は受けるものです。私の経験では9割くらいの割合で拒絶理由通知が来ます。

拒絶理由通知が来ても

拒絶理由通知が来ても、適切に対応するとかなりの確率で特許になります。この拒絶理由の対応を「中間処理」といったりします。私の経験では、適切な中間処理を行うと拒絶理由を解消して8割以上を特許にしていると思います。

拒絶理由って

拒絶理由については、主に、2つに分類できます。1つは「記載内容が明確でない。」というものです。これは、比較的解消しやすい拒絶理由です。特許法の条文では36条が該当します。もう1つは「先に似たような技術が世の中に知られています。」というものです。特許法の条文では29条、ごく稀に、29条の2が該当します。本当は、他にもいくつか拒絶理由はあるのですが、9割以上が、この2つに分類されると思います。

「記載内容が明確でない」という36条の拒絶理由を記載不備といいます。

「先に似たような技術が世の中に知られています。」という29条の拒絶理由は、主に2つのパターンで通知されます。1つ目は、「新規性違反」といって29条1項になります。これは、同じ技術が世の中に知られている場合です。2つ目は「進歩性違反」といって29条2項になります。これは、知られている似た技術を組み合わせたら簡単に思いつきますよという場合です。

今回の「消毒機能付き宅配ボックス」の拒絶理由通知も29条1項、29条2項、36条6項2号が理由になっていました。

記載不備

記載不備について、今回は、急いで出願したため、記載を誤っていたようで、修正するのはそれほど難しくなさそうでした。ちなみに、中間処理の際に行う修正を「補正」といいます。そして補正を行うための書類を「手続補正書」といいます。

新規性、進歩性違反

新規性、進歩性については、少し難しそうな内容でした。先の似たような技術として、いくつかの特許公報が引用されていました。特許庁の審査では大体、特許公報が先の技術として引用されます。本当はインターネットに掲載された技術でもいいのですが、インターネットに掲載された技術は、いつ公開されたものかわかりにくかったり、技術の内容が十分に示されたいなかったりします。ですので、公開された日付が明確で、技術内容が十分に示された特許公報が引用されるわけです。

引用文献を読んでみる

今回、引用された文献は、全部で4つ。1つ目は、ニッシン株式会社という会社の「共用ロッカー式宅配ボックス」についての特許公報でした。2~4つ目は、「清掃器」、「乾燥装置」、「洗濯物を収納する方法」についての特許公報でした。 これらの特許公報から拒絶理由では、簡単にいうと、「共用ロッカー式宅配ボックスに、清掃機や乾燥装置についている消毒機能をつければ「消毒機能付き宅配ボックス」は簡単に思いつくので特許にはなりません」と審査官に認定されていました。

拒絶理由の反論を考える

拒絶理由通知の字面だけみると、審査官のいうとおりです。AとBを組み合わせたらABになりますと言われているわけで、反論の余地もない感じです。しかし、ここで諦めたら特許は取れません。如何にこの審査官の認定に論理の飛躍や矛盾を見つけて反論するかが腕の見せ所です。または、特許の内容を「補正」して、先の公開された技術と違うことを主張して特許にします。

このブログの最初の方にも書きましたように、拒絶理由通知がきたうちの8割は特許にできています。多くの場合、何かしら反論の余地があったり「補正」ができます。次回のブログでは、反論や「補正」のやり方を、今回の「消毒機能付き宅配ボックス」を例に、具体的に説明しようと思います。