拒絶理由を受けた特許を分析してみる【最善をつくす中間処理②】

前回までの振り返り

前々回のブログ(特許の審査では拒絶理由通知を普通は受ける【最善をつくす中間処理①】)で消毒機能付き宅配ボックスの発明についての特許がスーパー早期審査で受けた拒絶理由について説明しました。

記載不備と進歩性違反という典型的な拒絶理由でした。では、どんな特許の申請(出願)が拒絶理由を受けたのかというところ公開していきます。

ちなみに、スーパー早期審査の案件なので、まだ公開はされていない内容を含んでいます。

【特許請求の範囲】という書類がメイン

特許では【特許請求の範囲】という書類が一番大事な申請書類になります。

【特許請求の範囲】内容を特許にしてくださいという申請だからです。

消毒機能付き宅配ボックスの【特許請求の範囲】は以下のようになっています。

【請求項1】

 屋外に配置され、宅配物を遮蔽して保管する宅配ボックスであって、

 少なくとも1つの面が開放する箱体と、

 前記箱体の開放する面を封する蓋体と、

 前記箱体の内部に設けられ、前記箱体の内部を消毒する消毒装置とを備え、

 前記宅配物が前記箱体の内部に配置され、前記蓋体が前記箱体を封した状態で前記消毒装置が動作することを特徴とする、宅配ボックス。

【請求項2】

 さらに、前記箱体が封された状態で前記蓋体が開かないように動作するロック装置を備え、

 前記ロック装置が動作した状態で、前記消毒装置が動作する、請求項1に記載の宅配ボックス。

【請求項3】

 前記消毒装置は、少なくとも前記宅配ボックスの側面を消毒する、請求項1に記載の宅配ボックス。

【請求項2】と【請求項3】は、今回はオマケみたいなものですので【請求項1】を文節に分けて解説すると

消毒機能付き宅配ボックスの【特許請求の範囲】の解説

 屋外に配置され、宅配物を遮蔽して保管する宅配ボックスであって、

→一屋外におかれた宅配ボックス(A)

 少なくとも1つの面が開放する箱体と、

 前記箱体の開放する面を封する蓋体と、

→箱と蓋がある(B)

 前記箱体の内部に設けられ、前記箱体の内部を消毒する消毒装置とを備え、

→消毒装置が箱の中にある(C)

 前記宅配物が前記箱体の内部に配置され、前記蓋体が前記箱体を封した状態で前記消毒装置が動作することを特徴とする、宅配ボックス。

→箱の中に宅配物が置かれて箱が蓋された状態で消毒する(D)、、、宅配ボックス

自分で考えた【特許請求の範囲】ですが、結構シンプルですね。

宅配ボックス+消毒装置という既存の商品を組み合わせただけなので、【特許請求の範囲】がシンプルになりやすいです。

【特許請求の範囲】はシンプルな方が良い?

発明がこれまで世の中にないものだと、【特許請求の範囲】が複雑になります。

例えば、「時計」を考えると、現在、「時計」は既存の商品なので文章で説明する必要はありません。

しかし、「時計」が、まだ世の中にないときに、「時計」を説明しようとすると、「長針と短針があって、長針は1時間で1回転し、短針は12時間で1回転する、時刻報知装置」みたいに説明しないと伝わりません。

【特許請求の範囲】というのは、世の中の人や審査官に発明の内容を説明するものなので、既存商品の組み合わせほど、シンプルな記載になりやすいわけです。

ちなみに、【特許請求の範囲】がシンプルなほど、広い権利になります。

特許のとれる【特許請求の範囲】

ただし、既存商品は特許になりません。これを「新規性」がないといいます。

今回の場合は(A)と(B)だけでは、一般的な宅配ボックスですが、(C)以下で消毒機能が付いているので新規性はあると考えています。

また、既存商品の単純な組み合わせも特許になりません。これを「進歩性」がないといいます。

今回の場合は、(A)と(B)の一般的な宅配ボックスに、(C)の消毒機能が付いただけでは進歩性がなくて、(D)の「箱の中に宅配物が置かれて箱が蓋された状態で消毒する」という特徴で「進歩性」があると考えていました。進歩性があるときの特徴を特有の特徴といいます。

(D)の「箱の中に宅配物が置かれて箱が蓋された状態で消毒する」という機能も、センサ等で実現される既存機能ではありますが、不特定多数の人が利用する宅配ボックスにつけて、消毒に使うというところを特有の特徴として特許にしようと考えたわけです。

「箱の中に宅配物が置かれて箱が蓋された状態で消毒する」という機能があれば、消毒に使用するアルコールや紫外線が外に漏れないという効果が生まれるので、宅配ボックスでこの効果があれば特許になる(したい)という考えで【特許請求の範囲】をつくりました。

新規性の判断は結構簡単なのですが、進歩性の判断は非常に難しいです。単純な組み合わせなのか、特有の特徴になるのか、、、

まとめ

しかし、本件では拒絶理由が来たので、これだけでは特許にはならなかったということです。

シンプルで広い特許を取れるように出願しましたが、残念ながら拒絶理由通知を受けてしまいました。

でも、ここから拒絶理由を回避して特許取得を目指します。次回のブログは、拒絶理由対応(業界用語では中間処理といいます。)について書きたいと思います。