スーパー早期審査は本当に早いのか?【最速で受ける特許審査】

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知財事業研究所の弁理士の山本英彦です。

前回のブログ(特許出願は1日でできるのか?【最小でやってみる特許出願】)

最小の内容で書いた「消毒機能付きの宅配ボックス」の特許出願について、スーパー早期審査をかけてみました。

スーパー早期審査とは

「早期審査」が「スーパー」になったものです。字のごとく、すごく早く審査をしてもらうための制度です。どのくらい早いかというと、特許庁の資料では、スーパー早期審査の申請をしてから1ヵ月で1回目の審査結果でることになっているようです。1ヵ月です!早い!!参考までに普通の審査だと2019年のデータで、審査請求をしてから平均9.5カ月かかるようです。速度とすると約10倍です。ちなみに、早期審査でも2ヵ月くらいかかります。

審査は早ければ良いというものではない

しかし、審査は早ければよいというわけではありません。案件によって、早い方が良い場合もあれば、遅い方が良い場合もあります。特許の審査が遅い方が良い場合というのは、少し違和感があるかもしれません。普通に考えたら特許が登録されて困ることはなさそうだからです。しかし、特許を登録してしまうと困る場合があります。詳しくは別のブログで書きますが特許は一度登録すると、申請した内容を修正するのが難しくなります。すなわち、出願段階なら修正できたものが、登録後には修正できなくなって困ることがでてきます。

スーパー早期審査を研究してみる

今回の「消毒機能付き宅配ボックス」の特許出願は、研究テーマとしての意味もあって出願しています。ですので、「スーパー早期審査」を研究するために、「スーパー早期審査」の申請をしてみました。申請手続は、それほど難しくありません。申請しようとする出願の番号や、出願人の住所や名称を書いて、なぜ「スーパー早期審査」を希望するのか理由と、既に特許調査を行った結果を書きます。あとは、インターネット出願で提出するだけです。書類作成の開始から30分もあれば提出が完了します。

驚異のスピード

そして、今回の場合は、スーパー早期審査の申請を行ったのが4月16日、特許庁から審査内容の通知があったのが5月7日でした。なんと、3週間足らず。しかも間にゴールデンウィーク挟んでます。審査の結果としては拒絶理由通知という、このままでは特許になりませんよ、という内容だったのですが、その通知の起案日は4月24日です。実質1週間で審査されていました。

特許庁での審査には、調査と通知書類の作成が含まれます。今回の場合、拒絶理由通知という書類は5ページに文章が丁寧にぎっしり書かれています。これを書くだけでも1~2日はかかると思います。また、特許の調査はかなり煩雑です。さらっとやるだけなら1日で済みますが、しっかりやろうとすると、無限に調べることがあります。民間の調査会社に依頼しても1~2週間くらいかかると思います。特許庁は、民間よりもスピード感のある行政でした。すごいですね。。。

審査の結果は拒絶理由通知

ちなみに、今回のスーパー早期審査の結果で届いた拒絶理由通知には、いくつか特許公報が引用文献として列挙されていました。そして、特許公報のどの部分にどのような技術情報が記載されているかなど、詳細に説明されています。その説明から分析してみると、なるほど、確かに今回の「消毒機能が付いた宅配ボックス」の特徴の多くが引用文献に開示されています。しかし、引用文献に記載さていない技術内容もあります。この部分をつけば、特許になるかもしれないという手ごたえを持ちました。

次回に続く

今回の「消毒機能が付いた宅配ボックス」の1回目の拒絶理由通知を具体例に次回のブログでは、拒絶理由通知について書きたいと思います。

それにしても、行政機関の特許庁が民間と変わらないスピードで業務を行っているというのには頭が下がります。日本の特許庁は本当に優秀だと感じました。