商標の識別力【普通名称の普通ってなに?】

知財で事業を創る。

知財事業研究所の弁理士の山本英彦です。

【パソコン、スマホだけではなく商標にも意匠にも最高のセンス。どの角度から見ても素晴らしい】を読んで

「apple」といえば

「apple」と聞いて思い浮かぶのは「iPhone」でしょうか?それとも「iPad」?「iPod」?「Mac」?

どれもセンスの良い商品です。「apple」という言葉は、日本では、商品[りんご]に対して使うより、[電子機器]などに使う場合の方が多くなっているのではないでしょうか。

商標的なセンスも抜群

そんな「apple」という社名は商標的にセンス抜群です。「apple(りんご)」という誰でも知っている言葉をIT会社に持ってくるところが素晴らしいと思います。ちなみに、「apple」の社名の由来は、ジョブズが前職の会社「ATARI」社よりも電話帳で前に来る名前にしたかったからだそうです。

普通名称は商標登録できない?

「apple」の商標ですが、世界中で商標登録されています。世界企業なので当然ですね。


しかし、「普通名称」は商標登録できないって聞いたことありませんか?その知識は半分あっています。正確には「普通名称を普通に使うと」商標登録されません。

商標「apple」をフルーツ[リンゴ]につかうような場合ですね。これが登録できてしまうと、八百屋さんが困ります。[リンゴ]を売るときに「apple」のポップをつくると商標権侵害になってしまいます。

一方、商標「apple」を[パソコン]に使うのは、普通に使うことにはならないわけです。

普通名称の境界線

どこまでが普通に使うことになるのか。そこの境界が気になりますよね。

商標「apple」を商品[りんごの木]に使う場合は商標登録できる?
これはOUT(できません)です。

商標「apple」を商品[ゼリー]に使う場合は商標登録できる?
これもOUTです。[りんごゼリー]の商品が既に世の中にあるためです。

商標「apple」を商品[Tシャツ]に使う場合は登録できる?
これはOK(登録)だと思います。

「ゼリー」と「Tシャツ」の間に境界線があることになりますが、この境界線についてはっきりしたことは言えません。

登録の可否を審査する審査官によっても境界線は変わってきます。

法律的には

法律上は、その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格についての普通名称であると登録しないと規定されています。

ゼリーの場合は「apple」が原材料になるためです。[ジュース]や[アイスクリーム]も同じ理由OUTでしょうね。

イメージ的には

商標「apple」についての普通名称の境界

[りんご]、[ゼリー][ジュース][アイスクリーム]

――――――(境界線)――――――

[Tシャツ][パソコン]

こんな感じでしょうか。

境界線を明確には判断できない

基本的には審査をしもらわないと境界線がわかりません。
私の商標出願戦略は、境界線付近でいろいろ出願しながら、OKとなる商標を探すというやり方です。
境界線付近で商標が取得できると強い武器になることが多いです。