特許出願は1日でできるのか?【最小でやってみる特許出願】

知財で事業を創る

知財事業研究所の弁理士の山本英彦です。

知財事業研究所は特許出願も研究

知財事業研究所では、知財を事業にする手法を研究しています。
その中には、知財そのものを研究することも含まれます。
ですので、特許そのものも研究対象になります。
今回は、特許出願を最小の内容で行った事案について報告します。

新型コロナウイルスの弁理士への影響

令和2年4月初旬、
新型コロナウイルス感染症の影響が急速に広がる中、
日本でも緊急事態宣言の発令を待つ状態にありました。

経済が停止する状況下にあることを感じざるにはいられませんでした。
私も、スタートしていた新規事業の依頼が完全になくなり、
先行きの不安を感じていました。
やることがほとんどない手空きとなった私は、
いわゆるアフターコロナの経済について考えていました。

経済がヒト、モノ、カネ(「情報」)で動いているとすると、
コロナの影響でヒトの動きが止まり、その代わりに、モノと情報が、
これまで以上に動く世の中になると考えました。
簡単な例では、ECサイトなどのインターネットでの売買が
従前よりさらに盛んになり売買に関する情報量が急増し、
また、販売された物品を運送する運送業も忙しくなります。

コロナの前から気になっていた「置き配」

また、コロナの影響とは関係ないところで、知財事業研究所では、
以前から「置き配」のシステムに興味を持っていました。

置き配とは、インターネットで購入した物品を配送する際に、
手渡しではなく、玄関先など指定した場所や簡易型宅配ボックスを介して
荷物を受け取れる非対面の配送方法です。

組み合わせから生まれる新しいアイデア

運送業の繁忙と「置き配」とが私の頭の中でつながって
新しいアイデアが生まれました。
新しいアイデアといっても「消毒機能付きの宅配ボックス」程度の、
誰でも思いつきそうなものです。

置き配の盗難などの問題で宅配ボックスが
今より普及しそうということと、
コロナの影響で宅配ボックを経緯由した荷物であっても
感染を嫌う人が出てきそうということとが組み合わさったわけです。

特許出願してみる

「消毒機能付きの宅配ボックス」
誰でも思いつきそうなアイデアだと考えたので、
本来は類似の特許がないかを調べて出願するところですが、
調査をする前に、早期の特許出願のために資料作成をはじめました。

特許出願の資料は、
「願書」、「特許請求の範囲」、「明細書」、「図面」、「要約書」
になります。

私の特許出願の資料作成手順は、「特許請求の範囲」を作成し、
「図面」と「明細書」を同時につくりながら、
「明細書」の内容に基づいて「要約書」をつくり、
最後に願書を作成して完成します。
案件によっては図面を先に作ってしまう場合もありますが、
概ねこの流れになります。

今回は、特に特許出願を急いだので、
特許請求の範囲の請求項の数を3つ(通常は6~10くらい)、
明細書は3ページ(通常は6ページ以上)、
図面は2枚(通常は6枚以上)といった内容にまとめました。

通常の半分以下の分量です。
一般的に、特許を取るためには、分量が多い方が有利です。
特許を取る弁理士としては、どうしてもたくさんのことを書こうとして
分量が多くなってしまいます。
しかし、今回は特許を確実にとることよりも、
特許出願をすることを優先しました。

ちなみに、特許出願で最初に出願日を確保できれば、
出願日から1年以内であれば、
優先権主張出願という出願を新たにすることで、
元の出願になかったアイデアの内容を追加することができます。

今回の特許出願は、この優先権主張をすることを前提に、
資料を最小限に抑えました。
とはいえ、なんでもかんでも削ればよいわけではなく、
最小限の分量を見切ることは必要です。

結局、1日で出願

資料ができたら、電子出願ソフトで出願手続を行います。
この手続きは、数分で完了します。
今回は、アイデアを前日に思いついて、ある程度まとめていたものの、
特許出願(資料作成から出願手続)に要した時間は1日となりました。

この案件は、あくまでも自分のアイデアで、
さらに、本当に誰でも思いつくような平易な内容だからですが、
優先権主張を前提にした最小の出願であれば、
1日でできることが実証できました。

今後の特許出願「消毒機能付き宅配配ボックス


今後、この特許出願が特許庁の審査でどのようにすすんでいくのか、
特許はとれるのか、などなど、報告していきたいと思います。